小説「首里の馬」の深読みし過ぎブックレビュー

horse 小説のレビュー

良かった点・納得いかなかった点

首里の馬のブックレビュー

首里城の画像
首里城

第163回 芥川龍之介賞を受賞し、素晴らしいとのレビューが多い「首里の馬」。

私はこの小説に魅かれた部分・納得いかない部分の両方がありました。芸術なので、そういうものかと思います。フワフワモヤモヤと残る物があって、全てを語らないのが美しいということかもしれません。

私が納得いかなかった点について、「これはこういうことですよ」と自分の解釈などを教えてもらえたら、とても嬉しいです。視野が広がります。

ネタバレありですので、未読の方にはおすすめしません。

良かった点

沖縄の戦争について勉強になった

沖縄の戦争のイメージ
沖縄の戦争

沖縄の戦争についてほとんど知識がなかったので、情報が消滅してしまうほどの壮絶さが伝わり、勉強になった。

違和感が小説の雰囲気にマッチしていた

台風と台風の間に不思議ことがおき、このスキマ時間だけの特別な空間のズレがあるような違和感が、首里の馬という小説の雰囲気に合っていたと思う。

情報をめぐる戦いが興味深い

沖縄の歴史・情報を後の世に伝えていく美しさ・尊さと、それを理解せず恐れる者たちの理不尽さが常に戦っていた。

世間の「未知ゆえの暴挙」に、登場人物たちは翻弄され、怒りを感じている。

特に、思想に基づく小グループが全て、オ○厶のようなカルト集団とみなされ迫害されたのは、今思えば主語の拡大も甚だしい。これも、正しく情報を活かせば避けられたこと。

つくづく、情報とは…知性とは重要なものだ

孤独への解釈が好き

孤独への解釈がわたし好みだった。

孤独を美化しすぎることなく、卑下することもなく、様々な孤独を淡々と描いている。それぞれの状況や精神状態が違うので、自分の気持ちに近い孤独を見つけ、共感した。やはり、孤独が必要な人もいるのだ。

小説「人間失格」の太宰治の強烈な孤独はまた、それはそれで読むのが好きではあります。)

納得いかなかった点

馬との結末

馬と主人公
馬と主人公の関係

馬の登場がドラマチックだっただけに、「乗れただけ?」という肩透かし感があった。もっと沖縄の馬らしい特徴の描写や、これまでの小説「首里の馬」の本筋にからむドラマチックな展開を期待してしまった。タイトルにあるから、なおさら。例えば、直木賞受賞作小説「少年と犬」くらいには、本筋に動物がからむものかと思っていました。

こういうものなのかもしれません。小説のタイトルと中身は必ずしも合致しなくても良いのかも。

情報の活かし方には言及していない…ただ…

情報の大切さが首里の馬のテーマだと感じたが、「では情報をどう活かすか」が描かれていないので、フワフワした印象を受ける。

せっかく資料館の写真や馬の記録をしているのに、ためるだけ。

小説「首里の馬」内で何度も触れられているように「戦争などで全て焼け落ちたとき、この情報は活きる」ので、必要なときにアクセスできるように工夫するのではないかと思う。

例えば、主人公も研究者になって論文を発表したり本を出す。あるいは、自宅を使って資料館の役割を引き継ぐなど。

クイズで繋がった孤独な3人の友人にデータを送信しているが、実際に何かあったときにその3人は必要な所にデータを提供できるのか疑問。

ただ…これでいい気もする
ボトルメールのイメージ
ボトルメールの風情

ただ、この現実問題を度外視したとき、孤独な3人にデータを送るという行為は、海にボトルで手紙を流すようになにか風情を感じる

更に、主人公があまり学校にいかなかったことや社会人経験が少ないという前提があるので、情報の扱いにプロっぽさがでたらキャラクターとして違和感が出てしまう。素人だけれど、やれることをがむしゃらにやっているくらいの方が彼女らしいし好感が持てるバランスなのかもしれない。

仕事を辞めたのが唐突

何故仕事を辞めたのかがよくわからなかった。

それまで辞めたいという記載はなく、逆に、一貫してその仕事が合っているという描写があったので、「突然どうして?」と驚いた。

馬を盗むという犯罪を犯すので、バレた時に迷惑をかけないためかもしれない。電気屋に嫌な態度をとられて、嫌になったのかもしれない。しかし、どれもしっくりこない。 そして、転職しないまま終わったので、「え、これからどうするの?」という庶民的な感想を持ってしまった

伏線回収について

カセットテープ2つ
カセットテープ2つは一体

キーアイテムとも取れる2つのカセットテープは、再生しないままなこと。資料館のものと盗んだプレイヤーのもの、2つのカセットテープがあるけれど、どちらも内容については触れられていない。何度もそれについて匂わせるような記載があったので、モヤモヤ。

最後のクイズに爽快感がない

最後に、初めてミナコ自身が考えたクイズを出したので、どんなものかワクワクした。それまでに何個か出されたクイズの伏線と沖縄の情報をバチンと噛み合せたものだと信じていたから。

しかし、今までの知性のかけあいではなく、沖縄の情報を伝える手段にクイズを使っただけで、私の期待するクイズとは違った。(what3wordsというアプリの暗号変換機能を使うと、答えがわかる。緯度と経度を言葉に置き換える、シンプルなもの。)

過去のクイズが、3つの単語で出題されていたから、それに「what3words」というアプリ名をかけたのかもしれない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました